米国のオンラインニュースソースのMedCity Newsは、米国でのスペシャリティ医薬品台頭を取り上げている。
スペシャリティ医薬品とは、複雑な慢性疾患や希少疾患の治療に用いられる処方薬の分類であり、もともとは、米国で20万人未満しか罹患していない希少疾病(orphan diseases)の治療を定義するためのものであったが、最近では、がん、自己免疫疾患、糖尿病、C型肝炎、HIV/AIDSなどの慢性疾患や複雑な疾患の治療の要として、スペシャリティ医薬品が台頭してきている。
スペシャリティ医薬品は高額な傾向があり、年間平均薬剤費は84,000ドル以上であり、特に超高額薬剤の年間コストは10万ドルを超えるものもあると指摘している。これに対し、米国の世帯収入の中央値は65,712ドルである。
スペシャリティ医薬品が高額になる背景には、広範で複雑な研究、開発、規制、製造プロセスが必要であることなど、いくつかの要因がある一方で、患者数が比較的少なく、患者一人当たりのコストが高くなる可能性もある。
2023年には、FDAが承認した医薬品の80%近くがスペシャリティ医薬品であり、承認促進プログラムでは過去最多の新薬が承認された。スペシャリティ医薬品全体では、薬剤費の56%を占めるようになり、2011年の28%から倍増している。高齢化社会と慢性疾患の蔓延により、今後もスペシャリティ医薬品が継続するものと予測されている。日本では、スペシャリティ医薬品の薬価が高い反面、患者数が少なく、財政影響は少ないとする意見もあるが、米国の統計からは、安易な希望的意見と言わざるを得ない。
一方、承認促進プログラムで承認された医薬品が、長期的には安全でなかったり、効果がなかったりする危険性があることの問題も指摘している。この点についても、早期承認された抗がん剤の臨床的有用性が乏しいものがあるとする論文が公表されている(本ホームページ4月9日公開「(論文)早期承認された抗がん剤の臨床的有用性」を参照)。
ニュースソース
1. MedCity News:A Deep-dive Into Specialty Pharma.
2. 医薬政策企画P-Cubed医薬政策情報:(論文)早期承認された抗がん剤の臨床的有用性.
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#スペシャリティ医薬品
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