米国ICER 遺伝子治療への支払いに関するホワイトペーパーを発表

2024年4月23日、米国の非営利組織Institute for Clinical and Economic Review (ICER)は、タフツ医療センターの NEWDIGS は、遺伝子治療への支払いに関わる「Managing the Challenges of Paying for Gene Therapy: Strategies for Market Action and Policy Reform(遺伝子治療への支払いに関わる課題の管理:市場行動と政策改革の戦略)」と題するホワイトペーパーを発表した。
遺伝子治療は、米奥での承認が増えつつあり、その中には高額なものもある。2032年までに、12以上の治療領域にわたって85の新しい遺伝子治療が承認される見込みであり、今後10年間に米国でこれらの治療に費やされる定価は350億ドルから400億ドルと推定されている。現在のところ、遺伝子治療が高額であっても、財政への影響はコントロール不能に陥るものではないとされているが、今後、小規模な支払者での支払いは不可能になる可能性がある。これまでの費用とアクセスのバランスをとる手段では、公平なアクセス達成を困難にする可能性もある。本ホワイトペーパーでは、マルチステークホルダーへのインタビューと文献レビューをもとに価格設定と支払いに関する新たな解決策の提案を行っている。具体的には、①適正価格の設定Determining a Fair Price、②臨床的不確実性の管理Managing Clinical Uncertainty、③短期的な予算インパクト管理Managing Short Term Budget Impactのそれぞれについて、いくつかの戦略を示している。
適正価格の設定については、①不確実性を反映した価格の引き下げReduce pricing to reflect uncertainty(例えば費用対効果評価の閾値の引き下げ)、②倫理的優先事項による価値に基づく価格設定Integrate special ethical priorities into value-based pricing、③シェアード・セービング による価値に基づく価格設定Calculate value-based pricing with “shared savings”が示されている。
臨床的不確実性の管理については、①マイルストーンベースのリベート(将来的な返還)を伴う前払金制Upfront payment with milestone-based rebate、②メーカーの保証効果に対する前払い制Upfront payment with warranty(効果がなかった場合、日割りで払い戻す)、③業績ベースの分割払いPerformance-based installment paymentsが示されている。
支払者の短期的な予算インパクト管理については、①予期せぬ多額の支払いに対する保険(ストップ・ロス保険)と再保険制度Stop Loss and Reinsurance、②複数保険者が加入するサブスクリプションモデルGene Therapy Subscription Model、③連邦政府による保険給付Federal Gene Therapy Coverage Benefitが示され、それぞれについてのプロ・コンが検討されている。わが国とは、医療保障制度が大きく異なるため、支払制度や財政影響管理については、わが国への導入はハードルが高いものの、価格設定の考え方は示唆に富む。

ニュースソース
Institute for Clinical and Economic Review: Managing the Challenges of Paying for Gene Therapy: Strategies for Market Action and Policy Reform.
https://icer.org/wp-content/uploads/2024/04/Managing-the-Challenges-of-Paying-for-Gene-Therapy-_-ICER-NEWDIGS-White-Paper-2024_final.pdf

キーワード
#遺伝子治療
#償還

2024年4月24日
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