医療技術評価ガイダンスでは、年率3%の割引率を推奨することが多いが、ほとんどのガイダンスでは根拠が示されていない(日本の中医協ガイドラインでは2%(0~4%で感度分析)を求めているが、根拠はない)。論文では、割引率に関する理論と各国のHTAガイダンスをPubMedにより網羅的に検索し、理論ならびに政策的視点から、より適切な割引率について提言している。
理論面からは、大きく分けて、①ボトムアップ方式(ラムゼー方程式)と②実質金利(市場金利)方式とがあること、32か国の高所得国のHTAガイダンスにおいて、22カ国は推奨金利の明確な根拠を示しておらず、8カ国は市場金利、3カ国は一貫性(過去の分析との一貫性/比較可能性Consistency/comparability)、3カ国はラムゼー方程式であったとしている。
論文では、消費成長と実質金利の低下は、HTAガイダンスが推奨割引率を1.5〜2%に引き下げるべきことを示唆していると結論付けている。また、割引率の引き下げにより、長期的なベネフィットを持つ治療法の費用対効果予測が改善され、特許切れによる価格引き下げなどの長期的な薬価のダイナミクスを考慮した場合の影響が大きくなるとしている。
(コメント:日本の割引率には根拠はないが、経済低成長下で、しかも2年に1回の診療報酬本体の改定が1%にも満たない状況で、割引率2%は高すぎる可能性がある。また、薬価については、毎年改定で割引率以上に下落しており、割引率2%は、医薬品の費用対効果分析結果を不利な結果に導く可能性がある。)
出典
Joshua T. Cohen : It Is Time to Reconsider the 3% Discount Rate. (Published: March 08) Value in Health, VOLUME 27, ISSUE 5, P578-584, MAY 2024 DOI:https://doi.org/10.1016/j.jval.2024.03.001
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