国際医薬経済アウトカム研究学会(ISPOR)の主要研究イニシアティブであるSpecial Interest Group (SIG)の一つ、バイオシミラーSIGでは、バイオシミラーに関する医療技術評価のあり方について検討を行っている。バイオシミラーSIGは、主要国のHTAの専門家に対する半構造的インタビューを行い、各国のバイオシミラーのHTAのアプローチを調査し、その結果をISPORの学会誌であるValue in Health誌に掲載した。以下は、論文の抄録の翻訳である。
目的:ISPOR Biosimilar Special Interest Groupが実施した体系的な文献レビューでは、バイオシミラーの価値評価方法や適切な経済評価手法に関するガイダンスが限られていることが浮き彫りになった。本研究では、バイオシミラーの価値評価に関する現在の医療技術評価(HTA)機関のアプローチについて説明した。
方法:アフリカ、アメリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパのHTA専門家と半構造化インタビュー(n = 16)を行い、バイオシミラーのHTAの現状を調査した。データの分類は、主題分析アプローチに基づいて行った。質的データ分析から得られた知見は、関連する公表文献に照らして解釈した。
結果:我々の研究によると、バイオシミラー医薬品の承認に関する枠組みが十分に確立されている制度では、HTA機関は規制当局の比較可能性評価を受け入れることができ、償還決定は一般的に価格比較に基づくことができる。このアプローチは実際に受け入れられており、バイオシミラーの価値評価を合理化することができる。しかしながら、バイオシミラーのHTAを実施することは、(1)先発品が償還されていない、(2)バイオシミラーの製造販売承認取得者が、先発品と異なる適応症/患者、剤形、投与方法、投与経路について償還を求めている、(3)付加価値の主張に基づきバイオシミラーに価格プレミアムを求めている、といった場合に関連する可能性がある。さらに、バイオシミラー発売後にクラスレビューの更新を行うHTA機関の役割は、患者の生物製剤へのアクセス拡大を支援することができる。
結論:国際的に、医薬品の価格設定と償還に関する各国の所轄官庁が、バイオシミラーに対するHTAの役割をどのように認識しているかは異なっている。したがって、HTA機関は、いつ、どのようにバイオシミラーのHTAを実施するか、また、どの経済学的手法を適用するかについて、明確なガイダンスを発表することが望まれる。
(坂巻コメント)世界のバイオシミラー業界にとっては、バイオシミラーの価格低下を問題視している。そうした中、バイオシミラーのHTAのあり方は重要な議論である。現在までのところ、各国でのバイオシミラーHTAのあり方はさまざまであり、ISPORによるガイダンス策定が望まれる。
ニュースソース
Teresa Barcina Lacosta, András Inotai, Catarina Lopes Pereira, Liese Barbier, Steven Simoens: Mapping Health Technology Assessment Agency Approaches for Biosimilar Value Assessment: An ISPOR Special Interest Group Report
Value in Health VOLUME 27, ISSUE 5, P543-551, MAY 2024 DOI:https://doi.org/10.1016/j.jval.2024.01.018
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