【論文】処方薬支出目標政策は実行可能性に乏しい

2024年7月19日のJAMA Health Forumの論文。

米国における処方薬への支出は、2022年に6330億ドルを超え、医療費の中で最も急成長しているカテゴリーとなっている。新たに承認されたブランド薬の価格上昇と、細胞治療や遺伝子治療などのさらなる高額な治療法によりさらに増加する傾向となっている。また、米国民の4人に1人以上の人が薬を買う余裕がなく、薬の量を減らしたり、薬局での処方を断念したりしている。

米国州政府は、処方薬への支出が増えれば、教育や交通など他の州サービスに使える資金が減ることに直結するため、毎年予算を均衡させなければならない。 そのため、各州は高額な処方薬支出を抑制するために様々な戦略を採用している。 例えば、メイン州とニューハンプシャー州では、州の医療保険制度(主にメディケイド)に対して、毎年の処方薬支出目標を設定することを議員立法で義務付けた。しかし、処方箋薬の支出目標は、必要不可欠な医薬品へのアクセスと購入しやすさを改善するという重要な目標に貢献するものであるが、その一方で、測定と実施に課題がある。

米国では(でも)、メーカーからのリベートや補助金、あるいは州の患者支援プログラムなどの存在が医薬品支出を正確に把握することを困難にしている。また小売薬局と診療所・病院での支出額を正確に測定することも困難である。さらに、支出額をコントロールするための手段も、現時点では有効なものがなく、目標設定、手段の両面での課題がある。

そのため、制度全体での支出コントロールより、高額医療技術の使用制限、薬価引き下げなどの個別的対応に陥りがちで、その結果として、効果のある治療技術へのアクセス制限につながる可能背もある。実例として、多くの州でのC型肝炎への抗ウイルス薬のアクセス制限、ノースカロライナ州の抗肥満薬の非償還などの例が示されている。また、フォーミュラリー管理も、患者や臨床医に負担がかかり、医薬品支出を抑制することは示されていないことが問題指摘されている。

 

Catherine S. Hwang(Program on Regulation, Therapeutics, and Law (PORTAL), Division of Pharmacoepidemiology and Pharmacoeconomics, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital), et al.:
Viewpoint Health and the 2024 US Election (July 19, 2024) State Spending Targets for Prescription Drugs.
JAMA Health Forum. 2024;5(7):e241663. doi:10.1001/jamahealthforum.2024.1663

 

キーワード
#医薬品支出

#米国

2024年8月12日
このページの先頭へ戻る