世界のバイオシミラー開発、2029年に空白期間に

ジェネリック、バイオシミラーの専門誌「Generic and Biosimilar Initiative:GaBI online」は、2024年8月13日、「がん領域のバイオシミラー開発における課題と解決策」と題する記事を掲載した。

がん治療の展望が発展し続ける中、バイオシミラーの役割はますます重要になってきている。2024年7月末までに、欧州で承認されたバイオシミラーの38~36%、米国で承認されたバイオシミラーの22~39%と、がん治療用のバイオシミラーが数多く承認されている。しかし、開発の空白により、将来、がん患者に対するバイオシミラーへのアクセスが制限される潜在的リスクがある。2025年以降、がん領域のバイオシミラーの開発数は減少傾向にある。 当初はパイプラインに複数のバイオシミラーが存在するが、この数は急速に減少し、長期的には開発数が4分の1まで減少する。

短期的(2027年まで)には、がん領域がバイオシミラー開発プログラムの最大シェアを占め(44%)、長期的(2027年以降)には、開発中のバイオシミラーの平均数は1分子あたり2.19から0.43に減少する。 この傾向は、がん領域バイオシミラー候補の平均数が4.3(短期、2023~2027年)から1.2(長期、2028~2032年)へと大幅に減少することが大きな要因となっている。さらに、2029年頃には、バイオシミラーの新規開発は完全に停止し、バイオシミラーが開発されない「開発空白期間」が生じる。

本稿では、バイオシミラー開発を妨げる可能性のある主な要因と、この減少に対抗するための推奨される戦略の概要として、以下が示されている。

〇バイオシミラー開発における困難さ:バイオシミラー開発を減少させるリスク要因

  • リファレンス製品のコスト:リファレンス製品の高いコストは、バイオシミラー開発の魅力を低下させる。
  • 貧弱な償還と保険適用:不適切な償還政策と保険適用がバイオシミラーへの投資を思いとどまらせる。
  • 患者リクルートにおける課題: 臨床試験に十分な患者をリクルートすることの難しさは、バイオシミラーの開発を遅らせたり、中止させたりする。
  • 製造の複雑さ: バイオシミラーの複雑でコストのかかる製造工程は、重大なハードルとなる。
  • ダイナミックな市場特性:がん治療における急速な変化と進歩により、バイオシミラー市場は非常に予測不可能なものとなっている。

〇緩和戦略(Mitigation Strategies): これらのリスク要因に対抗するための可能な解決策

  • 臨床試験プロセスの簡素化: 臨床試験プロセスを簡素化し、より効率的でコストのかからないものにする。
  • 柔軟なガイドライン:急速な技術革新のペースに適応できる柔軟な規制ガイドラインを導入する。
  • 財政的/競争的インセンティブ:バイオシミラー開発を奨励するため、財政的インセンティブを提供し、競争的環境を育成する。
  • 規制の整合性:異なる地域間で規制を調和させ、より円滑な開発と承認プロセスを促進する。
  • ホライズン・スキャン:新たな問題を特定し、その影響を評価し、戦略に反映させ、変化を監視する。

バイオシミラー開発の障壁を克服できなければ、欧州の医療財政を圧迫し、患者のアクセスを制限することになる。 その結果、バイオシミラーの利用可能性が低下し、150億ユーロの節約を逃し、生物学的治療のコスト効率に影響を与え、治療を受ける適格な患者数が制限される可能性がある。

(坂巻コメント:世界で開発されるバイオシミラー数が減少し、さらに日本で上市する品目も減少することに。)

ニュースソース
GaBI Online:Challenges and solutions in addressing the development void for oncology biosimilars(Posted 13/08/2024).
https://gabionline.net/reports/challenges-and-solutions-in-addressing-the-development-void-for-oncology-biosimilars

キーワード
#バイオシミラー
#がん領域開発

2024年8月14日
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