【論文】炎症性腸疾患のコスト-サステイナブルであるためには

クローン病(Crohn’s disease:CD)や潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)などの炎症性腸疾患( inflammatory bowel diseases:IBD)の世界的な有病率の上昇に伴い、IBDの医療費の現状と将来について検討する必要性が高まっている。

外来受診、入院、投薬などの直接医療費は相当な額にのぼり、高所得地域(high-income regions)では1人当たり年間平均9,000〜12,000ドルである。しかし、これらの推計は、病気の重症度、アクセスのしやすさ、医療インフラの地域間格差などの要因を十分に考慮していない。

間接的費用は、主に欠勤、在勤、その他の無形のコストによる生産性の低下に起因しており、IBDの経済的負担をさらに増大させている。間接費を定量化する努力にもかかわらず、多くの側面が十分に理解されていないため、間接費の実際の影響は過小評価されている。コストの持続可能性を達成するための課題としては、アクセスの格差、治療費の妥当性、標準化された費用対効果の高い治療ガイドラインの欠如などが挙げられる。

IBD診療を持続可能なものにするための戦略としては、生物学的製剤の早期導入、限られた資源しかない環境での費用対効果重視、直接費用を削減するためのバイオシミラーの導入促進などが挙げられる。技術や患者報告によるアウトカムを活用した集学的ケアチームも、IBDに関連する直接的・間接的コストの削減に有望である。IBDの経済的負担の増大に対処するためには、格差に対処し、費用対効果の高い治療薬へのアクセスを向上させ、医療システム間の協力的な取り組みを促進する包括的なアプローチが必要である。

革新的な戦略を取り入れることで、すべてのIBD患者がアクセス可能な、個別化された費用対効果の高い治療への道を開くことができ、より良い転帰と持続可能性を確保することができる。

 

ニュースソース

Johan Burisch(Gastro Unit, Medical Division, Copenhagen University Hospital – Amager and Hvidovre, Hvidovre, Denmark), et al.: The cost of IBD care – how to make it sustainable.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2024 Aug 14:S1542-3565(24)00729-8. doi: 10.1016/j.cgh.2024.06.049. Online ahead of print.
(筆頭著者の所属はデンマークであるが、共著者には米国、カナダの研究者が加わっている。特にカナダの研究者Gilaad G Kaplan氏は医療経済評価における大家)

 

キーワード
#疾病負荷
#炎症性腸疾患

2024年8月20日
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