米国では、低分子医薬品の場合、独占期間終了後にジェネリック医薬品との直接競合が出現したことが価格競争の原動力となり、支出の減少につながった。 しかしながら、生物学的製剤(バイオ医薬品)市場においては、特許の仕組みの違いにより、競争を確立することが難しい。 論文は、米国のバイオ医薬品における特許の仕組みを概説し、バイオシミラー市場にどのような影響を与えているかを考察している。以下論文の概要。
2010年、生物学的製剤市場の競争を促進するため、米国議会は、バイオシミラーと呼ばれる生物学的製剤の同等品を承認するための簡略化された経路を米国食品医薬品局(FDA)に設けた。 それにもかかわらず、米国におけるバイオシミラーの競争は、欧州の同業他社に比べて弱いままである。 この「バイオシミラー格差”biosimilar gap」の重要な要因は、アダリムマブ(ヒュミラ)やエタネルセプト(エンブレル)のような生物学的製剤のブロックバスターに対するバイオシミラーが、欧州では数年早く入手可能であったのに対し、米国ではFDAの承認を受けてから数年後にしか市販されていない(または、これから市販される)という事実である。2021年末まで、バイオシミラーはFDAの承認を受けてから使用可能になるまで中央値で301日かかった。最近のある研究では、生物学的製剤が承認されてから、その最初のバイオシミラーが米国の患者に使用可能になるまでの期間の中央値は21.5年であった。この競争の少なさが、生物学的製剤に対する米国の高額支出の一因となっている。 保健社会福祉省によると、2022年には米国の薬剤費の41%が生物学的製剤に費やされ、これは米国の処方箋の16%を占めていた。
市場環境の違いが特許制度に起因しており、その一つが単に米国特許の数ではなく、その広さが米国市場での長期的な遅れをもたらしているとされる。そのうえで、著者らは、米国特許商標庁(US Patent and Trademark Office:PTO)特許請求の範囲と特許保護の強固性についての研究を進めることを期待している。
ニュースソース
Doni Bloomfield 1, Aaron S Kesselheim 2:Patent Claim Scope and Biosimilar Competition in the US and EU.
J Law Med Ethics. 2024;52(2):439-442. doi: 10.1017/jme.2024.133. Epub 2024 Oct 22.
1: Fordham Law School, New York City, New York, USA.
2:Harvard Medical School, Boston, Massachusetts, USA.
キーワード
#バイオシミラー特許