革新的な政策による安価な医薬品へのアクセス確保に関するPPRI会議

2024年4月25・26日、世界保健機関(WHO)医薬品価格・償還政策協力センターは、オーストリアのウィーンで第5回医薬品価格・償還情報(Pharmaceutical Pricing and Reimbursement Information:PPRI)会議を開催した。 会議には、40カ国(EU加盟国21カ国、ノルウェーやウクライナなどWHO欧州地域11カ国、ブラジル、カナダ、シンガポール、南アフリカ、米国など他地域8カ国)から集まった参加者が参加し、医薬品政策の最適化について議論した。PPRI会議は、過去2007年、2011年、2015年、2019年、そして今回2024年に開催されている。J Pharm Policy Pract誌に掲載された「議事録」的論文。論文に記載されているテーマからいくつか興味深いものを紹介する。

特許切れ医薬品市場における競争の恩恵

ジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品は、高品質で効果的な医薬品へのアクセスを低価格で実現する。フィンランドの成功要因としてバイオ製剤の代替など薬剤師を対象とした需要側対策や、処方ステアリングによる医師対策などが分析、紹介された。

非常に高価な医薬品を公的にカバーするための革新的な政策

先進治療薬(advanced therapy medicinal products:ATMP)のように、医療制度にとって非常に高価で、そのため手の届かない価格の新治療薬が出現していることから、革新的な支払いモデルとして、アウトカムベースのマネージド・エントリー契約(outcome-based managed-entry agreements:MEA)、効率性フロンティアと医薬品革新性インデックスEfficiency Frontier and the Pharmaceutical Innovativeness Indexなどが議論された。

医薬品を患者にとって手頃な価格で入手できるようにする

医療制度にとって手頃な価格と財政的な持続可能性を確保することに加え、医薬品政策においても患者にとって手頃な価格を確保する必要がある。政策立案者向けのグッドプラクティス・チェックリストとユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関する対話型プラットフォームが紹介された。

エビデンスの創出と透明性

優れた意思決定のための前提条件は、強固で有意義なエビデンスの利用可能性であり、医療技術評価(HTA)の重要性は共通認識である。しかし、エビデンスはしばしば限られている。がん治療薬では、単群試験が増加傾向にある。さらに、過去10年間、公表されたプロトコールの約25%が結果を伴わず、利用可能なデータは公表されないことも多いなど、問題指摘がなされた。

 

Sabine Vogler(WHO Collaborating Centre for Pharmaceutical Pricing and Reimbursement Policies, Pharmacoeconomics Department, Gesundheit Österreich GmbH (Austrian National Public Health Institute), Vienna, Austria), et al.: ‘We need to be part of the solution’: lessons from the 2024 PPRI Conference on ensuring access to affordable medicines through innovative policies.
J Pharm Policy Pract. 2024 Dec 24;17(Suppl 1):2442002. doi: 10.1080/20523211.2024.2442002

(オープンアクセス)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11703438/pdf/JPPP_17_2442002.pdf

 

会議で取り上げられたトピックは以下の通りである。
ストランド1: 「地域的な課題、世界的な学び」
  • 過剰な価格設定に対する競争罰金の影響
  • ヨーロッパ各国の医薬品アクセス時間の比較
  • WHOモデルリストに基づく国家必須医薬品リスト
  • 価格設定と償還における公衆および患者の関与
  • より安価なバイオ医薬品の使用促進を促すための措置
  • ヒト免疫グロブリンの価格上昇の分析
  • 国際価格比較(ヨーロッパ、アメリカ、その他各国のジェネリック医薬品価格)
  • 早期アクセスプログラムおよび同情的使用プログラム
  • インスリンへのアクセス不足
  • 外部価格参照の波及効果
ストランド2: 「エビデンス基盤の強化」
  • 管理されたエントリー契約に関する公的データの公開
  • 医療技術のための革新的な支払いと価格設定スキーム
  • がん治療薬の臨床的利益の大きさ
  • ニーズ主導型のイノベーションと医療政策
  • 高度な治療法の価格設定
  • 成果ベースの遅延支払いモデル
  • 研究および医療イノベーションへの公的貢献
  • 登録、選択、調達、償還プロセスの整合性
  • 高額医薬品の定義の見直し
ストランド3: 「医薬品政策の将来性確保」
  • 公共調達における戦略的アプローチ
  • 入札における環境基準 / 複数受賞者のためのコンセプト
  • 学術病院による代替モデルを通じた手頃な価格のCAR-T療法
  • 結核治験のコスト分析
  • 公正価格計算機
  • 医薬品研究開発コストの分解
  • 地域密着型医薬品および薬剤サービスによるプライマリーヘルスケアの強化
  • 研究開発のための資金調達の将来方法
  • 医薬品不足に対する緩和政策としての財政的インセンティブ
  • 医療技術の公正価格の定義
  • 有効成分の生産をヨーロッパに回帰する可能性の検討
  • ホライズンスキャニングシステム
2025年1月15日
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