モノクローナル抗体医薬品の場合、他の生物製剤と同様に、イノベーター医薬品が最初に市販される一方で、1つ以上のバイオシミラー医薬品がそれに続くことが多い。 これらのバイオシミラー製剤は、イノベーター製剤とは製剤組成が異なることが多く、また互いに異なることもある。 しかし、異なる「ストレス」にさらされた原薬の安定性に対する製剤組成の影響は、まだ理解されていない。 我々は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(原薬と最終製剤の両方)の構造安定性と凝集挙動に及ぼす様々な製剤の影響を、凍結融解、凍結乾燥、撹拌という、製造、保存、凍結乾燥製剤への製剤化の過程で遭遇する最も一般的な3つのストレスに対して評価した。 使用した安定剤にかかわらず、製剤は3つのストレスすべてに対して良好なコンフォメーション安定性を示した。 しかしながら、凍結乾燥工程は可溶性凝集体の数を有意に増加させたが、これはショ糖含有製剤においてのみであった。 一方、ソルビトールを含む製剤を撹拌すると、不溶性凝集体が有意に増加した。 この効果もまた、この製剤組成物に界面活性剤が含まれていないことに起因している可能性がある。 トレハロースの安定化効果はその濃度に依存しないようであった。 したがって、製剤組成の影響は、トラスツズマブのコンフォメーション安定性よりも凝集に顕著である。 我々の知見は、製剤設計には有効成分のコンフォメーション安定性と凝集挙動の両方を考慮する必要があることを示唆している。
(坂巻コメント:日本では、バイオシミラー原薬製造はほとんど行われていないが、製剤化は日本国内で実施されている。今後、日本におけるバイオシミラー供給を活発化させる一つの方向性として、国内での製剤化技術開発も重要である。)
ュースソース
Aziz Ahmad(Department of Pharmaceutics, College of Pharmacy, University of Minnesota, Minneapolis), et al: Effect of formulation composition on trastuzumab stability.
Int J Pharm. 2025 Jan 25:671:125275. doi: 10.1016/j.ijpharm.2025.125275. Online ahead of print.
(オープンアクセス) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378517325001115?via%3Dihub