【論文】バイオシミラー市場参入におけるリアルワールドエビデンスの役割

バイオシミラーの市場参入に関連して、実臨床エビデンス(real-world evidence:RWE)の役割を探ることを目的とした総説。著者は、以下に貢献しうるとしている。

  • 適応拡大Extrapolation of indication:バイオシミラーは、一つの疾患領域での有効性・安全性が確認されると、他の適応症にも適用される。例えば、インフリキシマブは関節リウマチでの承認を基に、他の適応症にも承認された。
  • 代替可能性Interchangeability:米国では、バイオシミラーが「代替可能」と認められるには、参照製品との交互使用による安全性・有効性が証明される必要がある。RWEを活用することで、この評価を効率化できる可能性がある。
  • 非医学的切り替えNon-medical switching:バイオシミラーへの切り替えは治療の安全性・有効性に影響を与えないとされるが、ノセボ効果による治療中断が課題となっている。フランスでは、当初切り替えに慎重であったが、RWEをもとに方針を変更し、管理下での切り替えを推奨している。
  • 多面的プログラムMulti-faceted programmes:カナダ・ブリティッシュコロンビア州では、2019年から「Biosimilars Initiative」を実施し、切り替えを義務化することで市場シェアを拡大している。RWEを用いた評価では、この政策が市場拡大に貢献していることが確認されている。
  • コスト削減Cost savings:バイオシミラー導入による医療費削減効果が多くの研究で示されている。しかし、理論的な試算と実際の削減額に乖離があり、RWEに基づく実証研究が重要である。
  • 費用対効果Cost-effectiveness:バイオシミラーの費用対効果評価には明確なガイドラインがなく、ライフサイクル全体での評価が求められる。世界の医療技術評価機関は、RWEを費用対効果評価に活用していないことが明らかになっている。
  • 投与形態Administration form:ペグフィルグラスチムの自己注射とオンボディインジェクターの比較では、有効性とコストに差がないことが示されており、自己注射可能なバイオシミラーの経済的優位性が示唆されている。
  • 投与量Dosing:承認用量と実臨床での使用量の違いがRWEで明らかになっている。例えば、フィルグラスチムは実臨床では用量不足がみられ、ペグフィルグラスチムの方が費用対効果に優れるとされる。
  • マルチドーズバイアル Multi-dose versus single-dose vial:トラスツズマブのマルチドーズバイアル導入は薬剤廃棄の削減に寄与している。RWEによる分析では、シングルドーズバイアルへの移行で廃棄率が増加したが、マルチドーズバイアルの再導入で57%削減された。

以上から、RWEは、バイオシミラーの市場参入に関する課題解決に貢献し、関係者の不安を軽減する役割を果たす。しかし、既存の研究には方法論的な課題があり、適切なRWE研究設計の指針が求められる。薬剤師によるバイオシミラーの代替調剤や、患者の治療継続・生物学的製剤への早期アクセスへの影響について、さらなる研究が必要である。

 

ニュースソース

Steven Simoens(KU Leuven Department of Pharmaceutical and Pharmacological Sciences, Leuven, Belgium), Catherine M Lockhart, Delphine F Courmier:What role for real-world evidence in market access of biosimilars?
Front Pharmacol. 2025 Feb 24:16:1538866. doi: 10.3389/fphar.2025.1538866. eCollection 2025.
PMCID: PMC11891046  DOI: 10.3389/fphar.2025.1538866(オープンアクセス)

 

 

2025年3月19日
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