サレプタ・セラピューティックSarepta Therapeutics社は、2025年3月18日デュシェンヌ型筋ジストロフィーDuchenne muscular dystrophyに対する遺伝子治療薬としてFDAに承認されている製品Elevidys(一般名:delandistrogene moxeparvovec-rokl)の治療後に患者が死亡したことを発表した1)。サレプタ・セラピューティック社の発表の概要は以下の通り。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの若年男性が、Elevidysによる治療後、急性肝不全を発症し死亡した。急性肝障害は、Elevidysやその他のアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)遺伝子治療の既知の副作用であり、新たな安全性の懸念ではない。死亡に至る急性肝不全(acute liver failure:ALF)は、Elevidysは、これまでに臨床試験または処方療法で800人以上の患者に投与されてきたが、深刻な症状の急性肝障害は報告されていない。
検査により、この患者は最近、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)に感染していたことが判明し、担当医師はこれが要因の一つである可能性があると指摘した。CMVは肝臓に感染し、損傷を与える可能性があり、CMV肝炎と呼ばれる。
米国の複数の医薬品専門誌も同情報を伝えている。そのうちの一つMedCity Newsは、以下のように伝えている。
Elevidysによる遺伝子治療は、4歳と5歳の患者を対象に2023年にFDAの早期承認を得たが、第3相確認試験に失敗した。その後、FDAは、2024年6月、歩行可能な4歳以上のデュシェンヌ患者を対象とする承認に変更した。一方、歩行可能でない患者については、再度確認試験が必要である。また、ノバルティスのゾルゲンスマZolgensma(脊髄性筋萎縮症spinal muscular atrophy:SMAのAAV遺伝子治療薬)の発売後にも死亡例が報告されている。さらに、歩行困難なデュシェンヌ患者のリスクが高いことは前例があり、2021年、ファイザーの実験的遺伝子治療を受けた患者が臨床試験で死亡し、臨床保留となり、その後、ファイザーはこのプログラムを中止したことも伝えている。
(坂巻コメント:遺伝子治療の長期にわたる有効性、安全性には不確実性が多く、現在の償還・薬価制度での対応の難しさを示す事例。遺伝子治療に代表される不確実性を伴う治療に対してアウトカムベースでの償還を検討すべき事例と言えよう。
(参考記事:米国CMSが細胞・遺伝子治療アクセス研究計画書を公開))
ニュースソース
- Sarepta Therapeutics:Sarepta Therapeutics Shares Safety Update on ELEVIDYS.
https://investorrelations.sarepta.com/static-files/0d505d91-6722-4528-aae0-1e99fcbc37e5 - MedCity News:Liver Failure-Associated Death Reported in Patient Treated With Sarepta Gene Therapy Elevidys (By Frank Vinluan, March 18, 2025).
https://medcitynews.com/2025/03/sarepta-duchenne-muscular-dystrophy-elevidys-gene-therapy-fatality-dmd-srpt/?utm_campaign=MCN%20BioPharma&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz–tRuD1P5QMXrCOFefY_vv9_L8EQV55iA63DzCDWNcs0Y-DqZCLA2dxh87ywRcYTVMYhoxdkiK03M4NXzrYSm4Vi1uMAeJjf6k4C8s6GxfVBmLJB24&_hsmi=352693368&utm_content=352693368&utm_source=hs_email