【論文】米国成人における抗肥満薬チルゼパチドとセマグルチドの生涯健康への影響と費用対効果

JAMA Health Forum、2025年3月14日掲載の論文。tirzepatideとsemaglutideは、長期的に、心血管系イベントを減少させ、追加生存年を増加させるものの、米国の正味価格では費用対効果は高くないとする研究結果。以下は、著者抄録の抄訳。()内は、論文記載内容からの坂巻の追記。

 

目的:生活習慣改善と、生活習慣改善に4種類の抗肥満薬を上乗せした場合の費用対効果評価。抗肥満薬は、naltrexone-bupropion(毎日経口)、phentermine-topiramate(毎日経口)、semaglutide(毎週注射)、tirzepatide(毎週注射)について検討。

研究デザイン:2024年に、米国成人を対象とし、糖尿病、肥満、心血管疾患を組み込んだマイクロシミュレーションモデルを使用して、生涯にわたる費用対効果分析を実施。
2017年から2020年の全国健康栄養調査National Health and Nutrition Examination Surveyから、20歳から79歳までの4823人のデータをもとにシミュレーションを実施し、米国成人1億2600万人における長期的な心疾患イベント、質調整生存年(QALY)、医療費を予測。
(抗肥満薬としてのセマグルチドとチルゼパチドの正味価格については入手できなかったため、糖尿病治療薬のオゼンピック、マンジャロ等の価格から抗肥満薬の価格を推定している。論文中には、具体的な金額が示されておらず、日本の薬価との比較はできない。また、入院、救急外来、外来サービス、処方薬などの一般的な医療費に加え、歯科治療、在宅医療サービスも医療費に加えている。さらに生産損失も含めており、一般的には、費用対効果が良好になりやすい。)
確率論的感度分析、サブグループ分析(BMIカテゴリー別[≧30または≧27で体重関連の併存症が1つ以上]、併存症の有無)、および複数のシナリオ分析(治療中止率の変化、価値に基づく価格設定のベンチマーク)を実施した。将来の費用とQALYは毎年3%で割り引いた。

主要アウトカムおよび評価項目:肥満、糖尿病、心血管疾患イベントのそれぞれの回避確率、獲得追加生存年およびQALYs、追加費用(2023米ドル換算)、増分費用対効果比(ICER)。

結果:米国の成人1億2600万人のシミュレーションの結果、平均年齢48歳、女性割合51%、初期の平均BMI34.7、集団の85%が少なくとも1つの体重関連の併存疾患を有していた。
生涯にわたって、tirzepatideは10万人あたり45,609件の肥満、20,854件の糖尿病罹患、10,655件の心血管疾患罹患を回避し、semaglutideは10万人あたり32,087件の肥満、19,211件の糖尿病罹患、8,263件の心血管疾患罹患を回避した。
すべての抗肥満薬の中で、QALYの増加分が最も大きかったのは、tirzepatide 0.35、semaglutideで0.25であったが、ICERは、それぞれ197,023ドル/QALY、467,676ドル/QALYであった。100,000ドル/QALYの基準に達するには、現在の正味価格から、tirzepatideは30.5%、semaglutideは81.9%の追加割引が必要となる。naltrexone-bupropionは、その低価格により費用削減となり、100,000ドル/QALYの基準に対し、費用対効果が良好となる確率は89.1%であった。一方、phentermine-topiramateは、23.5%であった。tirzepatideとsemaglutideは、調査したすべてのQALY閾値の範囲(100,000~200,000ドル/QALY)において、費用対効果が良好となる確率は0%であった。

結論:この経済評価では、 tirzepatideとsemaglutideは長期的に大幅な健康上の利益をもたらすものの、現在の正味価格では費用対効果は高くないことが分かった。 非常に効果の高い抗肥満薬への公平なアクセスを確保するには、新しい抗肥満薬の正味価格を引き下げる努力が不可欠である。

 

ニュースソース

Jennifer H. Hwang(Section of General Internal Medicine, Department of Medicine, University of Chicago), et al.: Lifetime Health Effects and Cost-Effectiveness of Tirzepatide and Semaglutide in US Adults.
JAMA Health Forum. 2025;6(3):e245586. doi:10.1001/jamahealthforum.2024.5586(オープンアクセス)

2025年3月22日
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