Nature、2025年3月17日掲載の論説。著者は、ニューヨーク大学グロスマン医学部教授で、医療倫理が専門のアーサー・キャプランArthur Caplan氏。以下は、坂巻による簡単な要約。本文はオープンアクセス。
科学における多様性の重要性は揺るぎない現実であり、科学者はこれを堅持しなければならない。アーサー・キャプランは、ガリレオ・ガリレイの言葉「それでも地球は動く」を引用し、今日の米国における多様性、公平性、包括性(Diversity, Equity, Inclusion:DEI)への全面的な攻撃に対し、科学者が沈黙するのではなく、真実を語るべきであると主張している。
現在、多くの米国の科学機関や大学、政府機関がウェブサイトや研究資金、報告書からDEIに関する記述を削除している。しかし、これは科学の根幹を揺るがす行為であり、科学者は妥協すべきではない。DEIの意義は、単なる政治的スローガンではなく、科学の正確性と有効性に直結するものであるとする。
第一に、臨床研究や社会科学研究には多様な被験者の参加が不可欠であり、DEIへの配慮がなければ、薬や治療法の有効性や安全性に偏りが生じる。
第二に、医療提供においてもDEIは重要であり、患者と医療提供者の間に共通点があると、治療の受容性や満足度、健康成果が向上する。特にマイノリティや退役軍人など特定の背景を持つ集団にとって、DEIに基づく配慮は不可欠である。
第三に、科学研究における多様な視点は、革新的な発見や問題解決につながる。異なる背景を持つ研究者の存在は、思考の幅を広げ、従来の枠にとらわれないアプローチを可能にする。
市民団体や患者団体と連携し、DEIを無視することがもたらす「悪しき科学」への懸念を共有する必要がある。政治的圧力に屈することなく、科学的出版物や発言の中でDEIの重要性を強調すべきである。
「今は危険な時代だ。 世界の科学者は健全な科学のために団結し、偏見、偏見、憎悪に抵抗しなければならない。 科学がその核となる価値観のひとつである、真実がどこに導かれようともそれを尊重するのであれば、科学者はDEIが重要であるときに立ち上がらなければならない。 ガリレオの物語は、私たち全員に思い起こさせるはずだ。」と結ぶ。
ニュースソース
Arthur Caplan:Don’t wait out four hard years: speak truth to power.(17 March 2025)
Nature 639, 548 (2025), doi: https://doi.org/10.1038/d41586-025-00791-z