米国の医療費負担適正化法が成立して15年

バラク・オバマ大統領は、2010年3月23日、「患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act)」に署名し、法律として成立させ、今年は成立後15周年となる。2025年3月20日、Health Affairs Forefront誌 は、15周年を記念し、本法律の歩みと影響についての解説と洞察を提供する以下の4記事をリリースした。

  1. Jeanne M. Lambrew:The Affordable Care Act At Fifteen: Policy Surprises And Lessons
  2. Lanhee J. Chen et al.:Fifteen Years Later, The ACA Has An HSA Problem — But It’s Easily Fixable
  3. Christine Eibner :Has The Affordable Care Act Lived Up To Its Name?
  4. Nancy-Ann DeParle :The Affordable Care Act’s Fifteen Years In The Arena

論文4によれば、医療費負担適正化法は、以下を成し遂げたとされる。

  • 数百万人以上のアメリカ人を医療保険制度に加入させた。
  • 保険市場における最悪の問題のいくつかを解決した。
  • コストを引き下げた。
  • そして医療の質を向上させた。

もちろん、多様な評価や課題指摘はある。しかしながら、医療へのアクセス、費用負担、医療費コントロールなどの鼎立が困難な取り組みに対し、学ぶべき点は多い。以下は、論文1の要約。

医療保険制度改革法(Affordable Care Act:ACA)15周年における評価と教訓

医療保険制度改革法は、2010年の制定以降、当初の目標を概ね達成してきた。議会予算局(Congressional Budget Office:CBO)は、非高齢者の95%が保険に加入するとの見通しを立てていたが、2022年から2024年前半にかけて米国は過去最高の保険加入率を記録し、この目標を達成した。

保険の「加入しやすさ」と「負担可能性」の両立という二重の目標についても、GDPに占める医療費の割合がパンデミック期を除き大きく増加せず、一定の成果を示した。また、公共衛生(例:メニュー表示義務)、医療イノベーション(例:バイオシミラー承認制度)、医療の質(例:再入院率の低下)といった領域にも改革が及んだ。

もっとも、法律の施行過程は直線的ではなかった。2012年の最高裁判断や2013年のウェブサイト障害、2017年の上院での廃止否決など、重要な政治的転換点を経て、連邦議会による一部改廃、州の対応、行政命令などによってACAの実施形態は変化してきた。

著者は、ACA策定時からの関与経験をもとに、制度設計と実際の効果の乖離を「意外な結果(Surprises)」と「教訓(Lessons)」として整理している。

【意外な結果】
  • 個人加入義務(Individual Mandate)は必須ではなかった
  •  制度当初は、全員加入義務が制度の安定に不可欠と考えられていたが、2017年の税制改革で罰則が撤廃された後も、市場は崩壊せず、制度は継続した。
  • 保険料税額控除(Premium Tax Credits)の効果が予想以上に大きかった
  •  当初は限定的とみなされていたが、トランプ政権下の支払い停止や、2021年アメリカ救済計画法(ARP)およびインフレ削減法(IRA)による拡充により、市場加入者は倍増した。これらの措置の恒久化が今後の政策課題である。
  • 新設より既存制度の改良が効果的であった
  •  たとえば、既存の個人市場への規制導入(例:事前条件差別の禁止)が、短命に終わった新制度よりはるかに効果的であった。メディケイド拡大も既存制度を基盤としたことで成果を上げた。
【教訓】
  • 個人義務なしでもほぼ全国民加入は可能
  •  ただし、それには安価で利用しやすい選択肢、継続的な広報と加入支援が必要である。
  • 保険料税額控除を中心とした改革の深化が必要
  •  具体的には、 federal poverty level:FPLの上限撤廃や、150%未満の無償プラン継続、メディケイド未拡大州のギャップ解消などが挙げられる。
  • 既存制度の改良に注力すべき
  •  費用負担の軽減や医療ネットワークの質向上といった既存の課題解決は、新制度創設よりも効率的で持続性が高い。
【その他の教訓】
  • ACAは「スターターホーム(出発点)」であり、今後も改良を要する。
  • 保険の「中身」や医療アクセス体験の質の改善が不可欠である。
  • 医療費の抑制は依然として課題であり、シンプルな政策(例:メディケア価格の調整)が効果的である。
  • 困難があっても、大規模な制度改革は可能であり、ACAはその証左である。

ニュースソース

Jeanne M. Lambrew: The Affordable Care Act At Fifteen: Policy Surprises And Lessons.
Health Affairs Forefront. March 20, 2025 10.1377/forefront.20250319.4776

2025年3月26日
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