【論文】医療技術評価のための間接的治療比較の選択

BMJ Open、2025年3月25日公開の論文。以下は、著者抄録の抄訳。

背景:医療技術評価(health technology assessment:HTA)機関は、医療の意思決定に情報を提供するため、医療介入の臨床的・経済的価値を評価する。しかし研究者らは、標準治療に対する直接比較のランダム化臨床試験データが不足しているという課題に直面している。 間接的治療比較(indirect treatment comparison:ITC)法が汎用されており、世界中のHTA機関に受け入れられているが、実際には、方法論と臨床の観点から複雑である。

目的:論文では、(1)基本的な前提、枠組み、長所、限界、応用、具体的な検討事項など、使用されている用語を明確にすることで、ITC手法の包括的な概観を提供する、(2)主要なHTA機関からの推奨や嗜好を含む最近のITCガイドラインを検討する、(3)医療経済学とアウトカム研究(HEOR)の科学者と臨床家がITC手法を戦略的に選択する際の指針として、事例を示す。

方法:著者らは、2009年から2024年4月までの間に、様々なデータベースでITCの方法とITCに関連するHTAガイドラインに関連する文献を特定するために、レビューを行った。

以下は、考察からまとめた、本研究の要点。

1. ITC手法の理解と分類の課題

ITC手法には多様な用語と定義が存在し、理解と選択が困難であることが指摘されている。たとえば「adjusted ITC」という用語は、Bucher法やネットワーク・メタアナリシス(NMA)を指す場合がある一方で、文献によっては異なる定義がなされている。これに対し本論文では、Bucher法、NMA、PAIC(個別患者データを用いた調整型ITC)をすべてadjusted ITCの範疇に含めるべきであると提案した。また、ITC手法を明確に分類することは、手法選択の理解と説明に資するとされ、EUnetHTAの分類を参考に、ITCを以下のように大別している:

  • Bucher法(単純で実務上好まれる)
  • NMA(間接NMA、MTC、多時点アウトカム用NMA)
  • PAIC(MAIC, STC, NMR, ML-NMR)
2. HTAガイドラインにおけるITCの扱い

国ごとにITC手法に関するHTAガイドラインは異なるが、根本的な矛盾はなく、多くのHTA機関はadjusted ITCを支持している。ただし、受け入れ状況は国によって差がある。たとえば、

  • 英国(NICE)では47%のITCを受理
  • ドイツ(G-BA/IQWIG)ではBucher法のみが受理
  • フランス(HAS)では明確な受理例なし

この背景には、提出データの不均質性、バイアスのリスク、統計手法の妥当性の問題があると推察される。

3. 用語の誤解とその修正

EUnetHTAが2022年にPAICをガイドラインに追加した際、「アンカード vs アンアンカードITC」と「adjusted vs unadjusted ITC」の混同を招く恐れがある。本論文では用語の明確化を図り、表3にてそれぞれの定義と適用例を提示している。

4. ITC手法の妥当性の裏付けと文献検索の重要性

HTA機関は、適切なITC手法によって「非劣性」を示す証拠を受け入れる傾向にあるが、「優越性」を主張する場合にはより慎重な評価が行われる。したがって、系統的かつ包括的な文献検索がITC手法の信頼性と活用可能性を高める上で不可欠である。特に、PrismAccessやISPORのデータベースの活用が有用であると述べている。

5. 今後の実務への示唆

ITC手法をHTAで適切に活用するためには、

  • 用語と分類の統一
  • 効果修飾因子や予後因子の特定に関するガイドラインの整備
  • 多様なステークホルダー(研究者、政策決定者)の参画

が求められる。

 

ニュースソース

Jennifer D Guo(3ARx Solutions LLC, Boston, Massachusetts), et al.: Selection of indirect treatment comparisons for health technology assessments: a practical guide for health economics and outcomes research scientists and clinicians.
BMJ Open. 2025 Mar 25;15(3):e091961. DOI: 10.1136/bmjopen-2024-091961

2025年3月27日
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