バイオ医薬品における医療経済・アウトカム研究の重要性

MedCity News、2025年2月28日に掲載されたRob Abbott氏による投稿レポート。Rob Abbott氏は、ISPOR(国際医薬経済アウトカム研究学会International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research)のCEO兼エグゼクティブ・ディレクター。2025年3月25日に開催されたISPOR日本部会において講演を行った。
以下は論文の要約。

 

HEOR(Health Economics and Outcomes Research:医療経済・アウトカム研究)は、バイオ医薬品業界において証拠に基づくアクセス確保と市場での競争力維持に不可欠な役割を果たしているが、その価値は企業内で過小評価されてきた。近年、いくつかの大手製薬企業ではHEOR部門が再編され、部門リーダーの解雇や他部門への統合が行われた。しかしこれは、規制当局や支払者からのエビデンス要求が増す中、極めて不適切なタイミングである。

医薬品開発には膨大な時間とコストがかかる。HEORはその投資に対して、薬剤の費用対効果や実臨床での有効性を科学的に示すことで、薬剤の市場アクセスや収益化を支える橋渡し的存在である。米国のインフレ抑制法やEUのHTA規則、ドイツのSHI規制などにより、規制環境は一層厳しくなっており、HEORによる実証は「第4のハードル」として極めて重要である。

しかし、HEORが企業の収益貢献を十分に可視化できていないことから、「あればよいがなくても困らない部門」として見なされている現状がある。これを打破するためには、HEOR専門家が自らの成果をビジネス言語で説明し、企業価値への貢献を示すことが求められる。C-suite(経営幹部)に対して、HEORがいかに迅速に有効なエビデンスを提供できるか、またAIやデータサイエンスを活用してアクセス判断を加速できるかを示す必要がある。

実際、抗凝固薬エリキュース(アピキサバン)やHIV治療薬においても、HEORによる実証とアクセス戦略が世界的成功を支えた。また、HEORはラベル拡大や異なる患者層への適応証明を通じて、市場の拡大にも寄与している。これは患者アウトカムと企業収益の両立を実現した好例である。

今後、HEORは単なる学術的・科学的活動ではなく、バイオ医薬品分野における革新を支える多分野横断的な業務として再定義されるべきである。個別化医療、細胞・遺伝子治療、AI診断などの進展において、HEORは医療介入の価値評価と開発戦略の最適化に貢献できる。AIやビッグデータを取り入れたHEORは、開発コストの削減や有望な薬剤の早期特定にも資する。

医療が「コスト」から「価値」重視へと移行する中で、HEORは製薬企業にとって戦略的に不可欠な存在であり、新薬開発や市場アクセス戦略の意思決定に貢献する。最終的に、HEORが戦略的な役割を果たすことで、企業は競争優位を獲得し、患者にはより良い治療成果がもたらされる。

 

ニュースソース

MedCity News:Health Economics and Outcomes Research: Biopharma’s Underappreciated Value Creator. (By Rob Abbott on February 28, 2025)
https://medcitynews.com/2025/02/health-economics-and-outcomes-research-biopharmas-underappreciated-value-creator/?utm_medium=email&utm_source=database&utm_campaign=general_ispor&utm_content=engage_non-member-comms_mar2025_mar27&mkt_tok=NjM4LVBYUi0zMTgAAAGZd7vlqWkzZau26oBVaRHqxXsArv2kP3nJFqpaFcVjLFcFjhLGmPAMlY9lSUghChUsLP2Est8xDosfMtxCjUeVNY88xfRtvcuijrwt1Q

2025年3月28日
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