2025年3月5日オンライン掲載論文。著者らは、ドイツ、ギリシャ、キプロスに所属の医療経済研究者。高所得国、中所得国、低所得国での研究論文のレビューにより、医薬品支出を管理するための世界的な戦略を包括的に評価。
医薬品支出に影響を与える要因のうち、供給側の要因として、研究開発費、特許および知的財産権、およびそれらを保証する国の価格決定制度、生産・流通コストを指摘。一方、需要側の要因として、消費者の嗜好、処方慣行、国民の認知度などを挙げ、経済や医療制度の特性によって大きく左右されるとしている。その他、国による医療財政モデル、人口年齢分布の変化、消費者行動と処方実践、薬剤の量と治療法の変化も医薬品支出に影響を与えるとする。
一方、医薬品支出を抑制するための政策措置として、以下の広範な方策がリストアップされている(表)。以上をもとに、著者らは以下のように考察している。
(坂巻コメント:いうまでもなく、先進国、発展途上国を問わず、世界中で医薬品支出コントロール策が導入されている。某会議体で厚労省OBが医薬品支出をコントロールしている国はないと暴言を吐いたが。コントロール策を俯瞰的に見るのに有用な論文。)
- 政策介入の影響
- 医薬品支出の政策には公平性と効率性の両立が必要。
- 所得や地理、文化によるアクセス格差を考慮すべき。
- 健康成果や医薬品アクセスの格差縮小も政策評価の対象。
- ジェネリック推進は効果的だが、共同支払いは低所得者に不利。
- 参考価格制度は有効だが、患者の選択肢を制限する可能性。
- 医薬品支出管理における課題
- 医薬品支出増加の背景には複雑な供給・需要の要因あり。
- 政府の対策(価格調整、ジェネリック推進)の効果は国によって異なる。
- 成功した政策と再評価が必要な政策が混在。
- 政策介入は公平なアクセス確保とコスト管理に不可欠。
- 政策設計における公平性と効率性のバランス
- 公平なアクセスと効率的な資源配分の両立が重要課題。
- 統合的アプローチと継続的な評価が必要。
- 評価はコストだけでなく、医療の質や健康成果も重視すべき。
- 持続可能なアクセスの予測と計画
- 新薬への持続可能なアクセスには使用・支出の予測が不可欠。
- 精度を高めるには、予算決定直前での予測更新が重要。
- スウェーデンの研究では予測の有効性が示されている。
- 医薬品支出の社会的価値と総合的評価
- 医薬品の価値は社会的側面も含めて評価すべき。
- 高額な自己負担や狭い経済評価によるアクセス制限は問題。
- 治療不足の社会的コストの理解が医療イノベーションの評価に重要。
- 将来の方向性:世界的な協力と調和
- 医薬品支出の管理には国際協力とベストプラクティスの共有が必要。
- グローバルな調和により、手頃な価格、アクセス、イノベーションが実現可能。
- 今後は継続的な協力と制度革新の促進が鍵となる。
医薬品支出を抑制するための政策措置
Pricing policies | 価格設定ポリシー | ||
Price regulation | 価格規制 | ||
Reference pricing | 参考価格 | ||
Profit control | 利益管理 | ||
Parallel imports | 並行輸入 | ||
Generic and biosimilar substitution | ジェネリック医薬品とバイオシミラーの代替 | ||
Reimbursement lists | 払い戻しリスト | ||
Patient co-payments | 患者の自己負担 | ||
Physicians’ prescribing behavior | 医師の処方行動 | ||
Prescription guidelines | 処方ガイドライン | ||
Information campaigns | 情報キャンペーン | ||
Feedback mechanisms | フィードバックメカニズム | ||
Financial constraints | 財政的制約 | ||
Drug price negotiations | 薬価交渉 | ||
Volume & other discount mechanisms | 数量割引やその他の割引メカニズム | ||
Maximum spending agreements | 最大支出契約 | ||
Centralized drug procurement programs | 集中医薬品調達プログラム | ||
Educational strategies | 教育戦略 | ||
Practice guidelines | 実践ガイドライン | ||
Continuing education programs | 継続教育プログラム | ||
Drug committees | 薬物委員会 | ||
Patient information initiatives | 患者情報に関する取り組み | ||
Regulating direct-to-consumer advertising | 消費者向け広告の規制 | ||
Pharmacoeconomics—health technology assessment | 薬剤経済学 – 医療技術評価 | ||
Administrative and financial strategies | 管理および財務戦略 | ||
Fixed budgets for prescribing | 処方のための固定予算 | ||
Price review & reductions | 価格の見直しと値下げ | ||
Price/volume agreements | 価格/数量契約 | ||
Financial incentives to physicians and pharmacists | 医師と薬剤師への金銭的インセンティブ | ||
Facilitation of generic drug market penetration | ジェネリック医薬品市場への浸透促進 |
ニュースソース
Vasileios Leivaditis(Department of Cardiothoracic and Vascular Surgery, Westpfalz-Klinikum, Kaiserslautern, Germany), et al.:International Experience in the Management of Pharmaceutical Expenditure: A Narrative Literature Review.
Review Br J Hosp Med (Lond). 2025 Mar 26;86(3):1-19. doi: 10.12968/hmed.2024.0676. Epub 2025 Mar 5.
(オープンアクセス) https://www.magonlinelibrary.com/doi/full/10.12968/hmed.2024.0676?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org