米国科学者連盟(Federation of American Scientists:FAS)による2025年2月10日のレポート。以下は抄訳。
1. はじめに:医療廃棄物と単回使用機器(SUD)の環境負荷
- 米国の医療システムは年間約500万トンの廃棄物を出しており、その80%は単回使用医療機器(SUD)に起因している。
- SUDの環境負荷の95%は製造過程に起因しており、その使用・廃棄は大きな環境問題である。
- FDAは新医療機器の監督を行うが、機器が単回使用か再使用可能かはメーカーが決定する。
- 再使用可能として販売するには高額な洗浄・消毒の検証が必要なため、メーカーはSUDとして販売する動機を持っている。
- 環境負荷を減らすには、FDAが再処理可能な機器の促進とその安全性の検証を主導する必要がある。
2. 課題と機会:SUDの規制と現場のジレンマ
- 医療機関は脱炭素や廃棄物削減に取り組んでいるが、SUDの影響が大きいためその対策が不可欠である。
- FDAのSUD再処理規制は、病院が低リスクSUDを再処理する際に過度な負担を課しており、「最も負担の少ない規定」の方針に反している。
- 病院は製造業者と同等の責任を求められるため、再処理に消極的である。
- 多くの低リスク機器(例:ペッサリー、白内障手術器具)は安全に再処理できるが、現行規制ではそれが難しい。
- 多くのSUDは、再処理が技術的に不可能なのではなく、単にメーカーが検証を行っていないに過ぎない。
- 再処理機器は新品より25〜40%安価で、2023年には約4億6500万ドルのコスト削減効果があった。
- 上位10%の病院の再処理実績を全国に拡大すれば、さらに22億8000万ドルの削減が可能とされる。
3. 行動計画:FDAのリーダーシップと制度改革
- FDAは再使用可能機器の承認・認可プロセスを明確かつ簡素化し、病院が規制違反のリスクなく再処理できるようにすべきである。
- 最大の医療機関である退役軍人保健局(VHA)は、再処理SUDの使用禁止を撤廃し、全国のリーダーとなるべきである。
- FDAは、安全な再処理実績のあるSUDリストを公表し、病院の再処理推進を後押しするべきである。
- 「単回使用」ラベルは、機器が再使用不可能であることを意味しないため、再使用可能な場合には「多回使用」に変更すべきである。
- FDAは再処理可能な機器の申請に対して、審査の迅速化や補助金などのインセンティブを与えることが望まれる。
- 低リスク機器には製造業者レベルの厳格な要件を課さず、再処理情報のデータベースを整備すべきである。
- FDAは、OEMが再処理を妨げる慣行を監視・抑制し、機器の素材情報を公開することで持続可能な循環型経済を推進すべきである。
4. 結論:費用・廃棄物・環境影響の削減に向けて
- 医療の費用・廃棄物・環境負荷を削減するには、再使用可能な医療機器の利用拡大が急務である。
- FDAの過度な規制が病院の再処理導入を阻んでいることが最大の障壁である。
- FDAは医療機器のラベリングと再使用承認の重要な役割を担っており、その姿勢はCMSやJoint Commissionなど他の監督機関にも影響する。
- 医療機器再処理制度の見直しにおいて、FDAが主導的役割を果たすことが不可欠である。
米国科学者連盟(Federation of American Scientists:FAS)について:広島と長崎への壊滅的な原爆投下後、科学が悪意を持って利用されることを深く憂慮した原爆研究者のグループが、人類のために科学と技術を利用することを約束する組織を設立した。 彼らが創設した原子科学者連盟は、科学政策を推進し、科学的誤報に対抗するために、さまざまな分野の何百人もの科学者が結集したことを認められ、やがて米国科学者連盟となった。
ニュースソース
Alexandra Melnyk & Amanda Artsen1: Supporting Device Reprocessing to Reduce Waste in Health Care.
Federation of American Scientists https://fas.org/publication/device-reprocessing-health-care/
2025年4月1日