【論文】GLP-1とデュアルGLP-1-GIP受容体作動薬の公平な配分

2024年4月17日発行のNEJMに「GLP-1とデュアルGLP-1-GIP受容体作動薬の公平な配分(Fair Allocation of GLP-1 and Dual GLP-1–GIP Receptor Agonists)とする論文が公表された。現在、世界中でGLP-1受容体作動薬と関連薬(セマグルチド、ティルゼパチドなど)の不足が問題となっている。この背景には、糖尿病に加え、肥満症、心血管系のリスク減少などへの適用拡大がある(さらには、アルツハイマー型認知症や睡眠時無呼吸症候群などへの効果も期待されていることから、これら以外への使用も増えていることも推察される)。本論文では、一国内にとどまらず、国家間の公正(公平、倫理的)な配分の枠組みを提案している。

ベルギー、英国、その他の国では、糖尿病への使用を優先するため、GLP-1受容体作動薬の減量への使用を禁止 または推奨している。米国では優先使用に関わるガイダンスを発表していないが、一部の医療保険制度では肥満症への使用を制限しており、メディケアでも減量への使用はカバーされていない。米国では、これらの薬剤の割り当てはほとんど先着順で人々の支払い能力に依存してきたため、人種的、民族的、社会経済的な不公平が生じている。

そこでこれらの薬剤の国民への恩恵を最大化しつつ、恵まれない人々(disadvantaged people)

を優先するための価値規範を示している。

 

乏しい医療資源を公平に配分するための基本的な倫理的価値観

価値説明
人々に恩恵をもたらし、危害を予防または軽減する。介入の便益を最大化する;救われた命または救われた年数で測定される。
平等な道徳的関心人種、性別、宗教、収入などの要素に関係なく、一人ひとりの道徳的重要性を同等に認識する。
不利な立場にある人々を優先する介入がなければ、短命や重病のリスクがある人など、最も不利な立場にある人を優先する。
社会貢献への報酬特定の人々を優先するのは、彼らが仕事やその他の努力によって、健康上の利益の最大化など、他の重要な価値を促進した、あるいは将来促進するから。

 

GLP-1およびデュアルGLP-1-GIP受容体作動薬の公正配分の枠組み

階層目的配分基準
1過剰症および早死を予防することにより、失われる可能性のある生命年数を最小化する。クラスIIIの肥満症(BMI:40以上)および代替治療が奏効しない重症2型糖尿病(HbA1c:8%以上)患者

フェーズ1:若年患者(例:50歳未満)

フェーズ2:高齢患者

2心血管イベントなどの差し迫った合併症の予防クラスII肥満(BMI:35.0-39.9)、次いで重症の2型糖尿病(HbA1c:8%以上)患者

フェーズ1:若年患者

フェーズ2:高齢者

3将来の心血管イベントなどの合併症の予防クラスI肥満(BMI:30.0-34.9)、次いで代替治療が奏効しない2型糖尿病(HbA1c:7%以上)患者

フェーズ1:若年患者

フェーズ2:高齢者

4生活の質と社会的・感情的健康の改善過体重(BMI:25.0-29.9)または2型糖尿病(HbA1c:>7%)の人で、他の段階に該当しない人

フェーズ1:若年患者

フェーズ2:高齢者

 

ニュースソース

Ezekiel J. Emanuel, Ph.D., Johan L. Dellgren, B.A., Matthew S. McCoy, Ph.D., and Govind Persad, J.D., Ph.D.: Fair Allocation of GLP-1 and Dual GLP-1–GIP Receptor Agonists. The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMp2400978

 

キーワード

#GLP-1

2024年4月29日
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