デューク大学マルゴリス健康政策センター(Duke Margolis Institute for Health Policy)は、2024年11月8日、「強靭で安全な医薬品サプライチェーンの構築: 地理的多様化の役割(Building a Resilient and Secure Pharmaceutical Supply Chain: The Role of Geographic Diversification)」とするホワイトペーパーを発表した。以下はその概要(summary)。
グローバルサプライチェーンは、米国の患者と医療提供者が依存する医薬品の多くを供給している。医薬品の製造、特に原薬の製造は、インドや中国を含む海外でかなりの割合で行われている。政策立案者は、地政学的紛争による混乱のリスク、特定の国における規制監督の課題、高度なバイオ製造技術の盗難や悪用の可能性、主要な製造拠点に影響を及ぼす可能性のある自然災害やその他の個別の事象による局地的な混乱のリスクなど、これらの国に製造拠点が地理的に集中していることに伴うリスクや脆弱性について懸念を表明している。
海外への地理的集中のリスクに関するこのような妥当な懸念と、グローバル医薬品サプライチェーンが提供する望ましい効率性についての理解とのバランスをとることが重要である。さらに、海外の製造拠点への依存が、最近の医薬品不足の直接的あるいは唯一の原因ではないことを認識することが重要である。政策立案者は、上記のようなリスクへの対応として、しばしば製造拠点の米国への移転(オンショアリング製造onshoring manufacturing)を求めているが、単に製造拠点を米国に移転するだけでは、他の手段がない限り、近年の深刻かつ慢性的な医薬品不足の一因となっている問題を解決することはできない。グローバルな医薬品サプライチェーンは非常に複雑であり、製造拠点の移転を意図した介入が意図せざる結果をもたらすリスクは高い。ある製品の国内製造を増やす政策を進める前に、政策立案者は、その製品の現在のサプライチェーンにどのようなリスクが存在するのか、国内製造がそれをどのように軽減する可能性があるのか、また、多様で地政学的に安定した場所でのその製品の製造を促進する国際的なパートナーシップが同じ目的を効率的に達成する可能性があるかどうかを評価すべきである。
ニュースソース
Duke Margolis Institute for Health Policy:Building a Resilient and Secure Pharmaceutical Supply Chain: The Role of Geographic Diversification.
https://healthpolicy.duke.edu/publications/building-resilient-and-secure-pharmaceutical-supply-chain-role-geographic