次の医薬品原薬供給不足リスク要因か?-PFAS規制

2024年11月28日 PINK SHEETは、「企業は合成化学物質に対する広範な規制に備えよ」とする記事を伝えている。EUは、環境と公衆衛生への害を防ぐために、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(per- and polyfluoroalkyl substances :PFAS) の規制を提案している。PFASに対するEUの規制は、製薬業界が必要不可欠な医薬品を製造・供給する能力を危うくし、医薬品の販売許可における規制遵守を危険にさらす可能性があるとしている1)。

一方、科学雑誌Scienceに医薬化合物の持続可能なPFASフリー合成の論文が2024年8月29日に公開されている2)。この論文では、代替フッ素源としてフッ化セシウム塩が用いられ、さまざまな基質とさまざまなアニオンを組み合わせることで、医薬品合成に関連する複数のフッ素化生成物が得られたという。 提案された手順の主な利点のひとつは、従来の化学ガラス器具を用いた一般的な手順よりも汎用性と柔軟性が高いこととされる。

PFASは、有機化学で最も強い化学結合のひとつである「炭素-フッ素結合」を含み、使用中や環境中で分解されにくい化学物質であるため「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれている。耐熱性や耐薬品性に優れるため、撥水剤、消火剤、フライパンの表面加工、フッ素樹脂の製造など、幅広い用途で使用されてきた一方で、高蓄積性や長距離移動性といった性質があることから、環境への排出が継続された場合の将来への影響が懸念されている。現在、日本でも水道水や河川のPFAS「汚染」が報告されている。

PFASの環境に与える影響を抑えるため、EU加盟5カ国は2023年初頭「化学物質の登録、評価、認可および制限に関するEU規則(EU Regulation on Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals:REACH)」に基づき、いくつかの緩和措置を講じた上で禁止することを提案した。提案によると、規制は2025年の第3四半期に発効し、18ヶ月の移行期間の後、適用除外がない限りすべてのPFASの使用が禁止され、医療や食品製造からファッション産業に至るまで、無数の分野に影響を及ぼすとされる。

欧州化学物質庁(European Chemicals Agency:ECHA)は、欧州製薬団体連合会(European Federation of Pharmaceutical Industries and Associations :EFPIA)との協議を行い、EFPIAは、47,677の世界的な販売承認が影響を受ける可能性があり、世界保健機関(WHO)の必須医薬品リストにある600以上の医薬品が危険にさらされる可能性があると主張したとされる。

 

ニュースソース

  1. PINKSHEET:EU: Companies Must Prepare For Wide Reaching Restrictions On Synthetic Chemicals.
    https://insights.citeline.com/pink-sheet/compliance/manufacturing/eu-companies-must-prepare-for-wide-reaching-restrictions-on-synthetic-chemicals-YAJPUFTEZJEHPPGPPJNX5MT6MU/?utm_campaign=SPARC%20-%20Pink%20Sheet%20-%20Daily&utm_source=Eloqua&utm_medium=Email&utm_content=SPARC%20-%20Pink%20Sheet%20-%20Daily&utm_term=Pink%20Sheet%20%7C%20Today%27s%20News%20%26%20Analysis&elqcst=272&elqcsid=124
  2. Mauro Spennacchio (Flow Chemistry Group, Van’t Hoff Institute for Molecular Sciences (HIMS), University of Amsterdam, Amsterdam), et al.: A unified flow strategy for the preparation and use of trifluoromethyl-heteroatom anions.
    Science (29 Aug 2024) Vol 385, Issue 6712, pp. 991-996, https://www.science.org/doi/10.1126/science.adq2954
2024年12月1日
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